苫小牧がまだ「苫小牧村」だったころ。ウトナイ湖につながる美々川のほとりの苫小牧村字植苗に、たぐいまれなる才能を持ったひとりの人物が住んでいたんだ。その人の名は、折居彪二郎。彪二郎は、世界でも有名な鳥獣採集家なんだよ。
若いころの折居彪二郎
(苫小牧市美術博物館 所蔵)
鳥獣採集家とは、研究者にたのまれて世界中のいろんな場所に出かけて、鳥やけものをつかまえて標本を作る人だよ。鳥やけものをとる時には、できるだけ傷をつけないようにしなければならないんだ。標本は、体長・体重・羽毛の色などの特徴を書いたラベルをつけて研究者にわたす。鳥学や動物学が進んでいなかった時代には、とても大事な仕事だったんだ。
折居彪二郎ってどんな人?
彪二郎は、1883年、新潟県生まれ。函館の港で仕事をしていた23歳の時に、イギリスの大英博物館の採集員だったマルコム・アンダーソンという人に「採集家にならないか?」と誘われたんだ。彪二郎は、韓国や中国など世界中に出かけて鳥やほ乳類を採集したんだよ。鳥や動物のことをよく知っていて、狩りの名人だった彪二郎の作る標本は、世界の研究者に感動を与えたので、「東洋のオリイ」と呼ばれたんだ。
30年間にわたる海外での採集を終えて、苫小牧にもどった彪二郎は、その後も、北海道やウトナイ湖の鳥やほ乳類の観察を続け、その保護に力を尽くしたんだ。鳥と自然を愛し続けた彪二郎は、1970年、87歳でその生涯を終えた。彪二郎が作った標本は、イギリスの「ロンドン自然史博物館」「苫小牧市美術博物館」に現在も大切に保管されているんだよ。
● 参考資料
「郷土の研究第5号」 苫小牧郷土文化研究会/発行 1986
「鳥獣採集家 折居彪二郎採集日誌」 折居彪二郎研究会/発行 2013
「新版 鳥類原色大図説Ⅰ」 黒田長禮/著 講談社 1980
「新版 鳥類原色大図説Ⅱ」 黒田長禮/著 講談社 1980
「原色日本哺乳類図鑑」 今泉吉典/著 保育社 1972